■カプセル人間の急増
カプセル人間の急増
(1)(川喜田二郎著・・・「カプセル人間から春の目覚めへ」)
二十歳前後のある青年が言った。「私たちはもうブロイラー人間だ」と。
ひとり淋しく閉じられた世界にこもる人間が増えた。ウォークマンが売れている世界は、そこで主体性が確立されているのではなく、不自然で不毛で自意識過剰な人間の大量生産につながってしまった、と川喜田は考えた。
カプセル人間は周囲の人間とも連帯感を持たない。自分の環境とも連帯感を持たない。
「自然に親しもう」と云うだけでは、もはや不充分。まわりに緑があっても、自然との連帯感は色あせている。川喜田はそれを「絵ハガキ的自然」と呼んだ。
(2)川喜田二郎・・・「森林文化都市」を」めざして
会社で仕事を命ずる側は作業を課しているに過ぎない。作業というものは、これはバラバラのものです。バラバラの部品をただ集めても何もひとつにはならない。おまけに作業なら人間よりも機械の方が速い。ますます人間不要ということになってくる。もう行き所がないから死ぬかということになってくるのです。
ここで魂の分裂が起こってくる。これが恐ろしい。他の人間と生き生きとした接触がもう保てない。バラバラの砂の如くなってくる。一人づつ、自分だけの心情的な狭い世界を閉鎖的に守るということになる。しかたがないから、そういう人たちは気の毒だが、カプセル人間という名前に決めた。薬のカプセルみたいなものです。
カプセル人間が今や急増している。ですから魂は安らぎを得ることができない。そういう人間が増えてくると、社会全体が漂流するということになる。
(3)藤原直哉・・・「半径3m以内しか見えない人」
よく今の時代は半径3メートル以内のことにしか興味のない人が多いと言いますが、こういう人は暗い人なのです。すなわち自分から発する光が弱いので3メートルから先のことが見えないのです。そのため世の中のこと、歴史、海外のことなどは全然わからず、そうした遠くの変化が失業とか家やお金がなくなるといったように3メートル以内に異変を発生させたときに初めて大変だと言いだすのです。
何となく投信を買っていて損をする人、何となくサラリーマンをやっていてリストラされる人、みな同じです。それは確かに半径3メートル以内のことだけしか見ないようにしていれば大抵は楽です。しかしそれでは津波から逃げられないし、時代の転換点では想定外の出来事の連続でまともに人生を歩むことができません。
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